「土産話」を作る日々・・・

薄れゆく記憶を残す・・・

2月15日・・・

仕事から帰って夜の20:00ごろだったかな・・・
ハニーの携帯が鳴った・・・

ハニー:「えっ!」

俺:「ん?誰?」

ハニー:「Mちゃんから電話・・・」

俺:「珍しいな(笑)」



・・・



電話で話すハニーを横目に夕食を食べた・・・

ハニー:「・・・なに?なんのこと?どうしたの?」

俺:「?」

ハニー:「何を言ってるのかよくわかんない・・・お願いだから、かわってよ(汗)」



電話を受けとる・・・



俺:「ほいっ♪どうしたん?」

Mちゃん:「拓ちゃんが・・・返事をしてくれないの・・・話しかけても応えてくれないの・・・さっきまで暖かかったのに、どんどん冷たくなっていくの・・・」

彼女の言葉は支離滅裂だったが、尋常ではない事態が起こったことだけはわかった・・・

俺:「ちょっと待て・・・とりあえず、そっち行くから、ちょっと待ってろ・・・」

電話を切る・・・

俺:「俺の車の鍵はどこだ!ねぇよっ!」

ハニー:「・・・目の前にあるよ・・・」

俺:「・・・ちょっと行ってくる・・・」

ハニー:「駄目だよ・・・あなた冷静じゃない・・・」


よく覚えていないが、怒鳴ったかもしれない・・・





何かの間違いだと自分を落ち着かせ、七人が乗れる親父の車を借りて福岡へ向かった・・・

途中、仲間を拾っていった・・・

その頃は冷静だった・・・

誰が何と言おうとも信じなかったから・・・




電話から2~3時間後・・・

拓ちゃんの自宅へ・・・

白い布が顔にかかっている見慣れた光景を見て一瞬で希望は消え、傍らにあったカーテンにくるまって泣いた・・・

どれくらいカーテンに隠れていたかは忘れた・・・

「ありえねぇし・・・」

「嘘だ・・・」

うわ言のように言っていたと思う・・・



その後のことはよく覚えていないが、誰かの言葉で1度自宅に戻った・・・

夜中の3時頃だったかな・・・

記憶がない・・・

次の日から2日ほど仕事を休んだはずだが、それも忘れかけている・・・
 
 
 
 
 
 
生まれて初めて『弔辞』を書いた・・・

泣きながら筆で書いた・・・

正式な形式にのっとり、完璧に書いたつもりだ・・・

拓が黄泉に持っていったので、どんなことを書いたかはよく覚えていないが、部分的に記憶がある・・・

「まだ、そっちには行けない・・・」

「まっとうに生きたら、また会えるだろ?」

「俺はまっとうに生きて、腐るほど土産話を聞かせてやる・・・」

そんなことを伝えた・・・

最後に『死者に対する最高の手向けは、悲しみではなく感謝だ』と書いた・・・

出会ったことを感謝して別れの言葉にした・・・


 
 
 

あの弔辞の裏には「Mちゃん」へのメッセージを込めていた・・・

 
「拓」ならそうすると思ったから・・・




後日・・・

Mちゃんから生命感のない声で電話があった・・・

「ちゃんと生きたら、また会えるんだよね・・・」

力強く「そうだ」と答えた・・・




俺達は生きないといけない・・・




5年前、一人称は「俺」だった・・・

「ワシ」の一人称は彼の死から始まった・・・

生前の「拓ちゃん」の一人称なんです。
 
 
 
 
忘れることはないが、記憶は薄れていく。